高齢者人口の増加によって成長が見込まれる介護業界の市場は、厚生労働省の「介護保険事業状況報告」によれば、08年度の介護費用額は6兆9千億円強であり、介護保険制度が開始された00年度の3兆6千億円強から大きく上昇しています。

この成長の背景には、日本の高齢者人口の増加があり、全人口に占める65歳以上の「高齢者人口」は20%を超えています。この傾向は今後も続き、2050年には40%になるとの試算もあります。

介護ビジネス

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また国の方針である「国から地方へ」「官から民へ」の流れが進む中、都市部を中心に子が親の面倒を見る習慣が消滅し、老人が老人を介護する「老老介護」や「一人暮らし高齢者」が増えているため、福祉法人、医療法人、民間企業による様々な介護サービスの提供は、今後さらに増えていくと予想されてます。

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介護ビジネスの利益

介護事業者の売上は介護報酬に大きく左右されます。

介護保険給付の対象となるサービスを提供する介護事業者の売上は、厚生労働大臣の定める基準に基づいて算出される「介護報酬」と、サービス利用者が支払う「利用者負担」です。

介護サービスと利用者の要介護度によって介護報酬の点数は定められていて(1単位10円)、基本的にサービスの難易度が高く、利用者の要介護度が高いほど、介護報酬も高くなります。

介護サービスは人件費が経費の7割を占めます。

介護事業にかかる経費は提供するサービスによって異なりますが、一般に人件比率が極めて高く、経費の7割を人件費が占めていると言われています。

その他には、広告宣伝費、事務所・施設の賃借料、求人広告費などが主たる経費項目です。
また施設でのサービス事業を新たな地域で提供するにあたっては、介護給付の基準を満たすために、かなりの投資が求められます。そのため、現在、一部の民間企業は、土地のオーナーに工事費の一部を「建設協力金(長期貸付金)」として無利子で貸し付けて必要な施設を建設してもらい、その建設施設を15~30年の契約期間に渡って賃借して、貸付金と相殺する形で家賃を支払う方式を採っています。

介護サービスの利益率は、種類によって大きく異なります。

「厚生労働省 介護事業経営実態調査(08年)」によれば、施設サービス以外の介護保険給付対象サービスのうちでもっとも利益率が高いのは「通所リハビリテーション」の15.1%で、「認知症対応型共同生活介護」8.5%、「短期入所生活介護」7.3%、「通所介護」6.3%、「訪問看護ステーション」5.7%、「有料老人ホーム(施設全体)」5.4%と続きます。

一方で、利益率が低いのは「居宅介護支援」マイナス16.1%、「訪問入浴介護」マイナス10%で、利益を上げにくいサービスであることが伺えます。
通所サービスや短期入所サービスなどの利益率が高いのは、利用者を一度に施設に集めることで、効率的にサービスを提供することが可能だからです。

居住サービス事業所の営業損益